PMS・PMDD (月経前症候群)とは
PMSは、月経前症候群の略で、月経周期の一部である月経前に、身体的・精神的な症状が現れる状態です。月経前不快気分障害(PMDD)は、月経前症候群(PMS)の延長線上にある重篤な、時には障害を伴う病気です。PMSもPMDDも身体的、感情的な症状がありますが、PMDDは極端な気分の変化を引き起こし、日常生活に支障をきたしたり、人間関係を損ねたりします。
六本木クリニックは東京都港区にある精神科・心療内科です。今回は、当院の見地から、PMSとPMDDの特徴と対策法をお伝えさせていただきます。
1.PMS・PMDD (月経前症候群)とは
PMSは、月経前症候群の略で、月経周期の一部である月経前に、身体的・精神的な症状が現れる状態です。これは生理的な変化によるもので、一部の女性が経験します。PMDDは、月経前不快気分障害の略で、月経前に深刻な精神的症状が現れる障害です。PMSよりも症状が強く、抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒り等が主な症状として挙げられます。
2.PMS・PMDD (月経前症候群)の原因
月経前は、女性ホルモンが変動する時期だと言われています。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンが存在し、排卵から月経前までの黄体期にはこの2つが多く分泌されるのです。しかし、黄体期後期の月経3日~10日前になると、エストロゲンとプロゲステロンが急激に減少します。このホルモンの変動が中枢神経に影響を及ぼすために、PMSやPMDDの症状が引き起こされると考えられます。
また、以下の神経物質・ホルモンにも影響を及ぼすとされています。
神経物質・ホルモン | 特徴 |
セロトニンの低下 | PMSやPMDDの症状が起きる原因として、神経伝達物質の働きも密接に関連しており、黄体期には、脳内伝達物質であるセロトニンが低下することが分かっています。セロトニンには本来、心を安定させる役割が備わっています。そのため、この物質が低下すると、感情のコントロールが上手くできなくなり、イライラや不安感が現れやすくなるのです。 |
神経伝達物質の影響 | 同様の神経伝達物質のGABA(ギャバ)も脳に作用することで、症状に影響を及ぼします。もともと、GABAはプロゲステロンの合成体と神経細胞にあるGABA受容体と結合して、不安を抑制する役割を持っているのです。しかし、黄体期後期はプロゲステロンが減少するため、プロゲステロンの合成体も比例して低下していきます。それにより、GABAによる不安の抑制効果も弱まり、強い不安感が生じやすくなる傾向にあります。 |
ホルモンパランスの乱れ | ストレスや睡眠不足なども、ホルモンバランスの乱れに関与すると言われています。そのため、適切にストレスを処理したり、しっかりと休養を取るように心がけることも大切です。 |
3.PMS・PMDD (月経前症候群)の症状とは
精神症状の苦痛を伴うPMSやPMDDでは、より多角的な治療が必要になってきます。精神科・心療内科では、症状に対応して抗うつ剤や抗不安薬、気分の波を調節する気分安定薬を組み合わせていきます。また、月経周期を考慮した服薬の仕方なども検討されることもあります。
ところで、月経というのは女性であることと切り離せません。月経との付き合いは、女性であることや自らの女性の身体を意識する大切なきっかけでもあります。長年重い症状に悩まされているという方は、精神科・心療内科にお問い合わせください。
〈月経前不快気分障害の精神症状〉
- 突然悲しくなる、涙もろくなるなど感情が不安定になる
- 著しいいらだたしさ、怒りがある
- 著しい気分の落ち込み、絶望感がある
- 著しい不安や緊張を感じる
このような症状が月経時にある場合は、医療機関での診察をお勧めします。
4.PMS・PMDD (月経前症候群)の治療・対処法とは
①投薬
PMDDに対するSSRIの服用は、継続的な内服、または黄体期の2週間にわたって服用することで最大の効果が得られますが、PMDDの症状が強まる月経直前の6日間程度、服用するだけでも効果があります。特にイライラや怒りの感情などを抑える効果があります。
SSRIの働きは、シナプスでのセロトニンの再取り込みを阻害して、セロトニン濃度を高めることです。SSRIはうつ病やパニック障害にも効果があり、それらの治療の場合、セロトニンの濃度が治療有効レベルに達するまでに時間がかかるため、効果を感じられるまでに2〜4週間かかります。
一方、PMDDの治療では、SSRIは即効性があり、約8割の方で投与開始から1〜3日以内に、症状の軽減が認められます。
②漢方薬
加味逍遥散
のぼせや便秘などの身体症状にも効果があります。ストレスを溜め込みやすい人に向いています。怒って顔が赤くなる、イライラするなどの精神症状に有効です。
当帰芍薬散
血流を良くして冷え性を改善し、痛みを抑え、むくみを改善するなど、特に身体症状に効果があります。
桂枝茯苓丸
肩こりやのぼせがある一方で、足の冷えがあるなど、体の血の巡りが悪い時に効果があります。
抑肝散加陳皮半夏
ストレスによる緊張感やイライラを抑え、神経を鎮めます。まぶたの震えなどの神経の興奮や不眠症に効果があります。
桃核承気湯
加味逍遥散に近い作用をもち、便秘がちで、イライラが強い場合に有効です。体が強く体力がある方(実証)に向いています。
③生活改善指導
PMSやPMDDも軽症から中等症の場合は、専門家などからの生活改善指導による効果が期待できます。長期の夜更かしや、偏った食事は主な原因です。ホルモンや自律神経のバランスが乱れ、PMSやPMDDの症状が深刻になるケースも存在するからです。 規則正しい生活や睡眠リズム、健康的な食事と適度な運動は症状を改善することに有効と考えられています。
④認知療法
PMSやPMDDに効果的心理療法には、認知(考え方)のゆがみを修正し、適切な行動を身につけられるように導く「認知行動療法」はPMSやPMDDに効果的です。認知の歪みを直すと、日々悩まされてきたストレスや感情の起伏が抑えられるからです。生活に日記を取り入れ、自身の生活を定期的に振り返る、またワーク&ライフバランスの見直しなども不快な症状を緩和する手助けとなります。
5. 当院の紹介
当院は六本木駅から徒歩1分の場所に位置する心療内科・精神科クリニックです。
適応障害、うつ病、不眠、不安、パニック障害などの診療はもちろん、心理士によるカウンセリング・各種心理検査を通じて、患者様とひとりひとりのこころの状態と真摯に向き合いながら治療を行っております。
当日予約やオンライン診療も可能ですので、スケジュールの変更が多い方や出張が多い方も安心して治療の継続が可能です。公式HPより24時間WEB予約を承っております。ぜひお気軽にご利用ください。
ストレスの多い現代において精神障害はとても身近な障害ですが、日本ではいまだ精神科・心療内科に通うことに抵抗を感じる方が多くいらっしゃいます。
当院の患者様の中にも「このくらいで受診していいのかな、、、」「薬に依存したらどうしよう?」「精神科ってなんだか怖いな」と思いながら勇気を出して来院される方が少なくありません。
当院は漢方やカウンセリングを治療に導入し、出来るだけ患者様のお体に負担の無い方法で治療を行うことをポリシーとしています。ひとりで悩んでいる時、まずはお気軽にご相談ください。